July 31, 2006

クー・ボンチャン個展 7.7-7.30 国際ギャラリー







クー・ボンチャン(具本昌)は1953年生まれの韓国を代表する現代写真家で、日本ではヒステリック・グラマー写真集シリーズに選ばれていることでその名を馳せた。
6月1日から7月17日まで京都の何必館で彼の今までのアートワークをたどる個展が開かれたが、同時期に国際ギャラリーでは彼の近作のみに焦点を絞って個展が開かれた。
それは、「コリア」という名でチャイナより安価なオリエンタリズムとして日本を始め世界中へと散っていった李朝白磁を撮り歩くというものである。



クー・ボンチャンは延世大学経商学科を卒業後、いったん大企業に勤めたが、組織的な生活に疑問を抱き退職、ドイツへと留学する。
そこで写真を学び、写真という切り口で彼の感性を目覚めさせたのだった。
1985年に帰国した彼は、あまりの韓国の変容に驚き、その様子をカメラに収めた。時はソウルオリンピックを目前に控え、韓国は経済的・文化的成長を遂げようとその様相を膨らまそうとしていたところである。80年代のクー・ボンチャンはそういった都市を「尾行」するシリーズ『長い午後の尾行』を発表している。



90年代からは人体の部分部分を撮り、全体を創出するようにミシンでつなげた『太初に』シリーズを、韓紙(ハンジ)という韓国の和紙に昆虫や蝶をプリントして標本にした『グッバイ・パラダイス』、死に行く父を撮影した『息』シリーズを連作として発表した。このころ、初めて日本で作品を発表している。
また、降り積もった埃やコンクリートのヒビなどをコンパクトに、しかし情緒的に切り取ったシリーズ『時間の絵』を発表以後、彼の作品はストレート写真へと変容を遂げる。


ヒステリック・グラマーの写真集にも掲載されている『仮面』シリーズは今回の展示を成す『白磁』シリーズへの橋渡し的存在である。昔から広大(クァンデ)という芸能集団によって引き継がれてきた韓国の仮面劇のその劇と役割ごとに取り分けた写真群だ。仮面に焦点を合わせ、周辺に近づくほどやわらかくぼやけたその像は、いまや観光客用の出し物となってしまっている事実を超えて、その原点である仮面と人との表現における共犯関係とでもいおうか、仮面劇の原点をやわらかに突きつけられたような印象を受ける。(このシリーズは京都の高麗美術館でも展示された)




そして今回の『白磁』シリーズである。

きっかけはオーストリアで陶芸家を訪ねたとき、その人が持っていた李朝白磁に心打たれたことだった。
白磁の美しさに心を打たれ、また半島を遠くはなれ世界に拡散する運命に心打たれたのだった。
国際ギャラリーの1階には、カラーの大判でフォトアクリル加工された作品が並ぶ。乳桃色の影に浮かぶ丸い輪郭、非常に柔らかで、静けさを見せている。そしてある悲哀をも持ち合わせている。フォトアクリル加工が、白磁の釉薬の持つ透明感を付け加えてくれる。
対して2階に展示されているのはモノクロの作品たちで、カラーの作品にくらべきりっとしてみえるが、白磁の持つ流浪の運命をさらに強くかもし出している。

今年で53歳を迎える作者は、おそらく帰国直後の85年のソウルオリンピックというコペルニクス的転回を起源として、自国の美を印画紙に刻み付ける作業にたどり着いたのであろう。
これからもそういった類の作品発表が期待される。

Posted by art,seoul at 08:06 PM