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July 26, 2004

『Sound Object キム・ヒュンホ個展』 Gallery ARTSIDE 7.14―20



   

(c)KIM HYUN‐HO


ギャラリーの多く集まる鍾路(チョンノ)・仁寺洞(インサドン)にあるGalley ARTSIDE
ここは絵画の展示が多いのだが、今回は音響オブジェ。

キム・ヒュンホ(金賢鎬)は、釜山の東亜大学・大学院でそれぞれ美術を専攻したのち、日本の多摩美術大学大学院へ留学、センサーや音響メディアを活用した彫刻を制作している。
グループ展や国際交流展は多数、主に釜山や東京で個展を開き、ソウルでの個展はこれが初めてとなる。


展示されているのは、”Sam Sara(Metempsychosis)”(Sam Sara=無常、Metempsychosis=輪廻)と名づけられた一連の作品群である。
作品名からも分かるように、仏教的イメージの色濃い作品である。
日本庭園を見たときのような気持ちになった。


そのうちのひとつ(写真上・左)は、鉄で作られた長方形の函が4つ組み合わされている。
その中からブォーン、という倍音がして、青色ネオンが点滅する(写真上・右)。
音の大きさやネオンの点滅速度は函によって微妙に違う。
音の振動で、函の上に満たされた水が波紋を描く。

また、デバイスに手を近づけるとスクラッチのような音が響き、手をかざしているデバイスの直下にある円形の盆に満たされている水が振動で波紋を描く音響装置。
大きい音になると水の波立ちが激しくなり、水が飛び散る。
それが自分の手の下で起こるため、自分が何かパワーを持っているような錯覚すらする。

他には、近づくとセンサーが働いて破裂音のような音がなる函、台の上に乗るとセンサーが働き、自分の周りを下から上へ、円状のレーンをカメラがめぐり、プロジェクターで自分の姿が映し出されるものなど(パンフレットの写真では座禅を組んでいた)。


またひとつ印象的だったのが、3階のギャラリースペースに敷き詰められた玉石、ただそれだけの作品。
これもまた一連の作品に属する。
スペースに入ると、玉石を踏むジャリ、という音だけ響く。
観客の動作によって発した自然音を観客自身が聞くというような試みは他の形であったような記憶がおぼろげにあるが、この場合、他の音響装置とメディアの性質が相反していてより刺激的。
裸足で踏めたならもっと良かった。


作品の撮影・掲載を許可してくださった金賢鎬氏には、心より感謝いたします。

Posted by art,seoul at 08:27 PM | Comments (0)

July 14, 2004

ドイツ作家展 (ロダンギャラリー、アートソンジェセンター、doART)


今回は韓国人作家ではなく、ドイツ作家の展覧会を続けて観たのでそれを3件。

『THE SCENIC EYE ドイツ現代作家展』 ロダンギャラリー


ロダンギャラリー。ここのビルボードはいつもこんなに大きい。


韓国の代表的美術館のひとつ。電子機器でおなじみのサムソンが経営。
去年の夏に開かれた『YES オノヨーコ』展で、さらにその名を世に知らしめた。

(視覚的効果・美術が重要な要素となった)現代演劇と現代美術の関係を主題として、フルクサスの先鋒で活動したヴォルフ・フォステルから、中国出身在独女性作家のチン・ユーフェンに至るまで、ベルリンを中心に活動する19人の作家が参加している。
展示されているのは、写真、絵画、彫刻、インスタレーション、音響と映像。

目を引くのは、ビルボードの写真にも写っているチン・ユーフェン(Qin Yufen)の『The legend of colour』。
黄色と紺色のマオカラーの服を着た首のない人形のようなものが、20体ぶらさげられている。高さは4メートルほどか。下半身が異常に長く、よく聞くと、その下半身に着けられた白いスカートの中から、鳥の鳴き声やギシギシという音などが聞こえる。
それは追憶(子供のころ、青春時代)の中にある音らしい。
マオカラーの服と共に、記憶と現在の感覚とのずれを表現している。

5月21日から8月8日まで。



『Tobias Rehberger展』 アートソンジェセンター


ガラスに木が映りこんでいますが。アートソンジェセンターに貼られていたポスター。


越後妻有アートトリエンナーレ2003にも出展したトビアス・レーベルガー。
70年代調のポップな色彩やデザインを生かした作品がずらりと並ぶ。

『Sleeping Room Cabinet』と『Children’s Room Cabinet』のキャビネットシリーズ(合わせて10作品)は、プラスチックで作られた大きな箱の中からTVの音や音楽がランダムに流れる。
私が行った時はナット・キング・コールの『Quizas,Quizas,Quizas』が流れていた。
すべてこのソンジェでの展示のための新作らしい。

また、2003年のヴェニス・ビエンナーレに出品された『7 Ends of the World』という作品。
丸いガラスシェードが色とりどりに、たくさん吊り下げられている。
「世界が終わった時に存在することの出来る7つの場所の光」としてこのランプがあるらしい。
ランプの色がその場所を表しているのだが、その中になぜ京都のバーガーキングが存在しているのだろうか(しかも京都にバーガーキングってあっただろうか…)。


6月6日から8月8日まで。


『Summer House』 Gotz Diergarten展 doART Gallery


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個人経営ギャラリーの多く集まる仁寺洞(インサドン)にある、アートショップ兼ギャラリースペースdoART

ショップは1階、2・3階にギャラリーがある。
今回のGotz Diergarten(ゲッツ・ディエルガルテン…と読むのだろうか)はデュッセルドルフ芸術アカデミーにおいて、ベルント・ベッヒャーのもとで写真を学び(卒業証書はファインアート)、フランクフルトで活動している写真家。
トーマス・ルフやアンドレアス・グルスキーの下の世代の代表的作家ということであった。

卒業後はヨーロッパ各地を周り、家やガラス窓を撮ってきた。
今回は『Gouville』と『Ravenoville series』という、フランス北部の海岸地域にあるヴァケーション・ハウスを訥々と写したシリーズを展示。

ヴァケーション・ハウスはどれもおもちゃのよう(スヌーピーの家のように)。
デュッセルドルフ芸術アカデミーを卒業したあとチューリッヒでデザインを勉強したということだが、色のセンスも感じさせる。
空はすべて白く曇っていて、ぼんやりとしたなんともいえない雰囲気をかもし出す。
孤独とか、虚無にも似ているような。しかし、非常に透明感のあふれた写真だ。
すべての写真は透明のアクリル板に挟まれていて、よりいっそう透明感を増す。

7月8日から25日まで。



今回はドイツの作家ばかり紹介したが、その他にも韓国国外の作家の展覧会は多数ある。
まだどこの美術館もギャラリーも韓国人作家中心ではあるものの、国外有名作家の展覧会が急増したような気がする。
他に代表的なものを挙げれば、金英燮写真画廊の『ユージェーヌ・アジェ』展(6.5―8.5)、朝鮮日報美術館の『ヘルムート・ニュートン』展(7.7―8.22)、またこれはソウルではなく忠清南道天安(チョナン)市のARARIO GALLERYでは『トーマス・ルフ』展(5.28―8.22)と『シンディ・シャーマン&ヴァネッサ・ビークラフト』展(9.1―11.21)が、ソウル市立美術館では『シャガール』展(7.15―10.15)が開かれている。

Posted by art,seoul at 06:15 AM | Comments (0)

July 03, 2004

『リアリング15年 The realing 15years』 サビナ美術館 2004.6.18―8.6




サビナ美術館。わざと錆びさせた建物の外壁が独特。


中堅作家を多く扱うサビナ美術館。 韓国で初めてギャラリーから昇格した美術館である。


「1990年代以後の、韓国現代美術におけるリアリズム美術の流れを一瞥して見る。
この時、リアリズム美術を現在進行形のものと捉えるため、“real+ing”という概念を想定する。
リアリズム美術を様式や流派の問題ではない芸術科の生に関する作家の態度の問題に近付くことで“態度としてのリアリズム”を提起する。
この展示<リアリング15年展>は80年代民衆美術以後に現われた態度としてのリアリズムに関する反省的懐古と批評的省察だ」
と、美術館の言葉にある。


韓国現代美術における民衆芸術とは、88年のソウルオリンピックまでが最も盛んだった、反体制的芸術のことをさす。
その後、民衆芸術と反体制的でない芸術が折り合いをつけたり折衷したりし、自国の伝統や現実に対する風刺などをインスピレーションとした芸術が盛んになる。
これがリアリズム美術と呼ばれる。


「リアリズム芸術を現在進行形のものと捉える」ということで、作品は1990年代から現在にかけてのもの。
展示に繁栄させているわけではなさそうだが、貼られているパネルによると、作家は「創作小グループ」と「個人作家」に分けられ、グループはさらに「現場美術+露天美術」、「過程としての公共美術」、「概念芸術+行動主義」に、作家は「パフォーマンス、ドキュメンタリー写真」、「映像設置+デジタル+オンライン」、「平面絵画と版画」、「立体+オブジェ+概念」とカテゴライズされている。


どれも、社会や政治の風刺や批判をする作品ばかり。

"労働美術委員会"や"絵工場"というグループの絵は、いかにも左翼的プロバガンダ絵画という感じの描き方。
別にどこかの政治団体に頼まれたわけでもなく、こういう描き方で彼らは自分の考えを主張している。


ソ・スンテクの『コメリカプロジェクト』(2004)と名づけられた3枚の写真と映像。
「コメリカ」とはコリア+アメリカである(最近韓国国内ではアメリカに対する批判が多い)。
駐韓米空軍の訓練、アメリカの戦車に轢き殺された2人の女子中学生の遺影を持ってたたずむ女性、デモに集まったおじさんたち。


キム・キスの写真『stealth』。空に描かれたハート型の飛行機雲。のんびりとした風景の手前にある大きなビルの屋上に、紙テープでアメリカの戦闘機ステルスが描かれている。

4月に開かれていた韓国の代表的な若い作家を紹介する『SeMA2004』(ソウル市立美術館)にも出展していたイ・ブロクの『W.C.(Wartime city)』は、よく街中や男性用トイレのピクトグラムに使われている人間のマークと写真・映像を用いて、いかに戦時に人間が個性を持たない等質のものとして扱われるか、そしてそういうものに人がなるかということを表現している。
濃い赤と黒だけの色彩。かえってビビッド。


ちなみに上映されている映像は3―6分の短編。どれもおもしろい。


6月22日から7月13日まで午後4時から、カテゴリ別に作家と作品について話すことのできる「作家との対話」も催されている。

Posted by art,seoul at 06:47 AM | Comments (0)