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November 22, 2004

『エルメス・コリア美術賞』展 アート・ソンジェセンター 10. 23 - 12. 5


チョン・ヨンドゥの『Wonder Land』のパンフレット。裏に写真の元となった子どもたちの絵。


たたむと


紙飛行機になる。




今年で5回目を迎えたエルメスコリア美術賞。
力量があり創意的な韓国の作家たちを支援しようという主旨で、2000年に制定された。
ちなみに今回の審査委員長は東京・森美術館の館長デヴィッド・エリオット。
この賞は、韓国の現代美術の中心的存在であるアートソンジェセンターと共同運営している。


パク・チャンギョンは、今までソ連とアメリカ、ドイツ、朝鮮半島に取材し、「分断」や冷戦に関する作品を作ってきた。
主に動画と写真を複合させた映像作品を扱う。

今回の受賞作『Power Passage』も、アメリカとソ連、そして北朝鮮と韓国の宇宙開発、北朝鮮の南進トンネルに関わるイメージを多用し、朝鮮半島の南北分断と冷戦を扱った作品となっている。
彼の使うイメージの多くは既成のもので、それにはフィクションもノンフィクションも関係がない。
『2010年宇宙の旅』(キューブリックの『2001年宇宙の旅』ではない)、『カウントダウン』といった映画からはアメリカとソ連の宇宙開発のイメージ、また実際1975年に行なわれた米ソの共同宇宙開発プロジェクト「アポロ-ソユーズテストプロジェクト」の映像を借用している。
それらに共通しているのは「結合」である。
『2010年…』からはアメリカの宇宙船ディスカバリー号をソ連のレオーノフ号に連結させる場面、『カウントダウン』からは米ソの月着陸の場面が抽出されている。
「アポロ-…」は米ソの宇宙船のドッキングを実施したものだ。

それからロックウェル・インタ−ナショナルが開発した軍事衛星へとイメージが移っていき、最後は韓国の打ち上げた衛星「アリラン衛星」と北朝鮮の「光明星1号」が映し出され、「2010年にはこの二つの衛星が宇宙で[ランデヴー](宇宙開発では人工衛星がドッキングするために近づくことを指す)するはずだ」と締めくくられている。


flying Cityは、現代都市文化に対する研究を続けている3人組(チョン・ヨンソク、チャン・ジョングヮン、オク・ジョンホ)のグループ。
まれに見る過密都市・ソウルがその成長過程で共同体に与えた影響、またこれから成長していく都市としてのソウルに、代案を提示している。

今回は、昨年から大規模に行なわれている清渓川(チョンゲチョン)復元工事を扱ったもの。
この川はソウルの大通り鍾路(チョンノ)の南に位置していた川。
ほとりは材木を継ぎ足して作った低所得者のスラム街となっていた。
それを排除する形で1960年代に川にふたをするように真上に道路が作られ、さらにその上に高架道路が建設され、川は暗渠となってしまった。
それ以降は、新しく作られた道に沿うように市場や小さな店がひしめくようになった。
が、今度は復元工事のために、その市場や小さな店の移転が余儀なくされている。

フライング・シティは、移転を目前に迎えた小さな店がひしめく町並みを収めた写真、住人たちがいかに強固なネットワークで暮らしているかという相関図、また移転を余儀なくされた住民のインタビュー映像を展示。
また、彼らの移転先である東大門運動場(トンデムンウンドンジャン)を、アートソンジェの空間にも見合うほどの本格的な模型で再現し、テーマパークであると同時に工業団地であり、市場であり、運動場であり、居住地であるという空間利用を提案している。


チョン・ヨンドゥは、前回の光州ビエンナーレや福岡トリエンナーレに出展した、ダンスする男女をモノグラムのように配置した壁紙が部屋一面に貼られた『ボラメ・ダンスホール』や、6月の「ドキュメント展」他に出展した、ソウルの一般的なアパートの部屋とそこに住む家族を写した『ときわ木タワー』などの写真作品で、都市に生きる人々の哀歓を見せてくれる作家。

今回は『Wonder Land』と題し、子どもが描いたクレヨン画をそのまま人物を使って写真に再現した。
子どもの絵ならではの、大人には思いもつかない突飛な発想、不条理(例えば遠近法を使ってないとか、有名な歌手になっている割には観客が1人しかいない、しかも歌手は観客の方に向いてない)さえもそのまま再現している。
子どもの描く曲線のギクシャクぐあいまでそのままだ(小道具のみ)。
子どももすごいがやはり作家もすごい。
ちなみに、アートソンジェのホームページにある『エルメスコリア美術賞』ページの表紙の写真は、「白雪姫」という題名が付いている。
「どこが白雪姫なんだ」と思いたくなるが、それは大人の勝手なイメージの固め方であって、こっちが悪いのである。

Posted by art,seoul at 10:18 PM

November 13, 2004

キム・サンドン 『入居おめでとうございます』展、 ソン・サンヒ 『blue hope』展



キム・サンドン 『入居おめでとうございます』展 オルタナティブ・スペース プル



インヴィテーションカード。




オルタナティブ・スペース(韓国語では「対案空間」という)プルが今年迎えた、新しい作家、キム・サンドン。写真作家である。
ベルリン美術大学に学び、ベルリンを撮った連作もいくつか並んでいた。


展覧会を祝う花輪の壁が、ユリのむせ返るような香りを放っている。
その壁を通り過ぎると、作品が現れる。
机のまわりに積み上げられた土嚢。
大きく引き伸ばされた写真の一点に、プロジェクターによってスポットが当てられている。
そこからは、植物の芽がにょきりと生えている。

そこからはベルリンを撮ったもの。3つの連作。
大学の庭を観察日記のように撮ったもの、また植え込みの地面や花壇を観察日記風に撮ったもの。
落ちた栗から芽が生え、花壇に植えられ、苗木らしくなっていく、花壇も作られていく、その過程を追っている。
もう一つは、スライドによるもの。
クリスマス前後の、モミの木にまつわる顛末。
植林された山から切り取られ、売られ、飾り立てられ、人々をクリスマスの雰囲気に酔わせたモミの木。
祝祭が終わると飾りを取られ、切り倒され、枯れるまで放っておかれ、かき集められてゴミ収集所へと運ばれる。
そのようなモミの木を、キム・サンドンは「忠実な友よ」と呼ぶ。


あとは、ソウルを撮ったもの。
空撮の写真が2点。箱庭や、集積回路に見える。高層アパートの並ぶその上方はスモッグでかすんでいる。
写真の前にはすだれのようなものが下がっており、等間隔で指輪がぶらさがっている。
異様な形で、よく見れば高層ビルの形をしている。
側には、この指輪をいくつもし、ブレスレットを幾重にも重ねた女性の手がマンション物件のチラシをいじっている写真を収めた本が置いてある。

それらが、ベルリンの連作とともに、人間の浅はかさや自然のひたむきさを浮き立たせる。
スモッグに煙った俯瞰図に見える高層マンションも、結局街づくりをつかさどるこの女性の指輪の一つに過ぎない。

高層アパートの中層部分を切り取ったものが一点。
直線がピッと切り立っていて、無駄なものが何もない。均一感が見て取れる。
ぐにゃりとカーブを描く建築の、看板だらけの雑居ビルを写したものが一点。
非常に不安定に見える。今にも動き出しそうだ。
好対照を見せるが、どちらも結局人間の欲望である。
切り立っていても曲線を描いていても、どちらも不安感を持たせる。

11月12日から23日まで。




ソン・サンヒ 『blue hope』展 INSA ART SPACE



3階展示場入り口。




釜山ビエンナーレに出展していた写真作家、ソン・サンヒ
その出展作品『令夫人A』(写真作品)と『国立劇場』(映像作品)も、そのまま展示されている。

『令夫人A』は、いかにも韓国のファーストレディといった感じの、凛とした女性がピンクのチマチョゴリ、白い手袋、勲章と紅綬を着け、前を見据えている。
その女性の目からわざとらしいくらいの大粒の涙が一筋流れている。
『国立劇場』も、政治的イメージの映像。
新政権(南北統一を表しているのだろうか)誕生の日、「この平和な日に、わが国がさらに一体であるべきと強調したい」と演説している新しき施政者とその夫人、そしてボディーガードがいる壇上に、暗殺者が銃を乱射する。
舞台の下から暗殺者に飛びかかる別のボディーガード、撃たれて倒れる夫人、机の下に隠れる施政者、それをかばうようにして銃を構えながら固まるボディーガード。
それが何十回と繰り返される。


それ以外の作品は、展覧会名でもある『blue hope』。
赤地に白ででかでかと「望夫石」と書かれた旗を担いだ白いチマチョゴリ姿の女性が、岩の上から海を見つめている。
「望夫石」とは、新羅・百済・高句麗の三国時代の説話。
日本に送られた人質を解放しようと向かった朴堤上(パク・ジェサン)という新羅の武将の夫人と娘が、夫を待ち続け、隧述嶺(チスルリャン、蔚山と慶州の境界にある)から日本の方向を毎日見ながら待っていたがついに亡くなってしまい、岩になってしまった、という話。
それを、こんな撮り方で表している。つげ義春を思い出してしまった。


あるフィクションの状況を撮り、それにテキストで物語をつけた作品群もある。
それにもまた、古朝鮮神話である檀君神話(熊と虎が人間になりたくてヨモギとにんにくだけを食べて洞窟にこもる修行をした。虎は途中で諦め熊は果たしたため天帝の子と結婚、朝鮮民族の始祖・檀君が生まれた)や、高句麗神話である朱蒙神話(天帝の光を受けて受胎した女の産んだ卵から初代王が生まれた)をモチーフにした作品が盛られている。

檀君神話の方は『太平な治世を夢見る虎』。
紀元前2373年には人間になれなかった虎が、4373年ぶりに再挑戦、民族的英雄になるべく洞窟にこもっている、という設定。洞窟から虎の尻尾がはみ出ている。
朱蒙神話の方は、『捨てられた卵』。
ごみ収集所に捨てられた巨大な卵を写し、この近所の住民たちは高句麗の始祖・朱蒙と同じ偉大な人物が生まれ、新しい世界を作ってくれると卵が孵るのを待っている、という物語をつけている。

また、全身金色に塗りたくられ、黄金の像と化した女性を写した『オモニ』がある。
チマチョゴリを着、三つ編みを結い上げた伝統的な髪形をしている。
シンボルに対して、ユーモアがあると同時に非常にシニカル。
11月5日から21日まで。

Posted by art,seoul at 07:09 AM