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February 11, 2005

ノ・ジナ 『Je suis l’hommelette!!』展 1.28-3.4  オルタナティブスペース・LOOP



ソウル大学卒業後、シカゴ・アート・インスティテュートでメディアアートを専攻したノ・ジナは、パソコンを使ったインタラクティブ・インスタレーションを作ってきた。
その中でも注目すべきは人間そっくりのアンドロイドを用いたインタラクティブ・アートで、アンドロイドとは人間がキーボードに文字を打ちつけることで意思疎通ができる。


それらのアンドロイドは「人間になりたい」という欲望を持っており、彼らの思考はそれを中心に構成されている。
一方、私たち人間は日常を機械で武装させている。
まるで自分には欠けていて相手にはあるものを欲しているように。
ノ・ジナはその対峙関係をテーマとして追っている。



今回の『Je suis l’hommelette!!』展では、ひたすら人間になりたいと願っているアンドロイドとの会話ができるインタラクティブ・アートと、巨大な人間の顔の、目玉の殻を破って生まれたアンドロイドのインスタレーションとで構成されている。
「l’hommelette」とは、「l’homme」(人)と「l’omelette」(オムレツ)とを掛け合わせた語であり、展覧会名は、人間の目玉から殻を破って生まれたアンドロイドの自己主張である。







巨大な人間の頭のインスタレーション。



目玉から生まれたばかりのアンドロイドは、人間が近づいて来るまでは眠りについており、ピクリとも動かない。
人間が近づくと感知し、見つめてくる。
その視界は、アンドロイドのまわりにある3つの小さなモニターに映し出される。
そしてやがて彼は私たちに話しかけてくる。
皮膚感が本物の人間に近く、しゃべる時の口元や眉間の動きは非常にリアルである。
彼(? 声は女性のように聞こえる)は言う。
「あなたと会えて嬉しいです。私と話がしたかったら、横の部屋にもう1人が必要です」。





インスタレーションのアンドロイド部分。



言われるままにパーティションの向こうに行くと、大きなスクリーンの前にキーボードが一つ。
スクリーンには、アンドロイドの大きな目のイメージを中心に、万華鏡を絶え間なく回すような目まぐるしい映像が展開されている。
その左右にはモニターが2つ。
モニターにはインスタレーションのアンドロイドが映されている。
その真上の壁からは何本ものチューブがこちらに向かって突き出している。
そして、アンドロイドの声が聞こえる。
「私の頭の中へ、ようこそ」。


人がアンドロイドのそばにいて、もう1人がキーボードの部屋で言葉を打ちいれると、双方がコミュニケーションをすることができる。
つまり、キーボードの部屋に入った人間はアンドロイドの自我になってしまう。
これが、ただ1人だけがキーボードの部屋にいると、アンドロイドの自我にはなれない。
いくらアンドロイドの言うことに誠実に答えたとしても、アンドロイドは、「早く人間になりたい、どうしたらなれますか?」とひたすら聞いてくる。





アンドロイドとの会話。


目の前のスクリーンに映し出される映像。
万華鏡のように、いくつもの鏡に映されて幾何学模様になったアンドロイド。
映像は目まぐるしく変化する。



テレビのモニターに映っているのはアンドロイド自身だ。
それをアンドロイドの自我になった私たちが見つめる。
これは、頭脳が発達した人間は常に生まれたときには未成熟であり、自分と同じ形の人間、次には鏡に映った自分の姿(しかし自分そのものではない)という他者を知覚することにより自己同一を得る、というラカンの鏡像段階論に基づくものである。


アンドロイドは人間が自我になることで自らの主体性を得、人間になりたいという欲望を満たそうとする。
私たち人間は、機械やコンピュータ、インターネットといったテクノロジーに囲まれた生活様式の中に生きている。
少なからず私たちの主体を形成する要因になっているだろう。
『Je suis l’hommelette!!』の前に立てば、そういったテクノロジーと人間の相互作用、あまりに狭まった距離感を感じられ、また人間がテクノロジーに取り込まれるかもしれないという恐怖感も湧いてくる。



資料提供:オルタナティブスペース・LOOP

Posted by art,seoul at 12:21 AM