« マシュー・バーニー『拘束のドローイング』展 2005.10.13-2006.1.8 サムソン・リウム美術館 | Main | 『BITMAP』展 2.17-3.14 オルタナティブスペースLOOP »

January 13, 2006

『エルメスコリア美術賞』展 10.22-12.11 アートソンジェセンター




アートソンジェセンターの入口に設置されたエルメスコリア美術賞のボード。



6回目を迎えたエルメスコリア美術賞
ずっと休館が続いているアートソンジェセンターはこのエルメスコリア美術賞のためにその扉を久々に開いた。
果たしてソンジェセンターがこれからどのような姿に変わっていくのかも気になるが、今回はともかくエルメスアワードである。

今回ノミネート委員会はアン・ソヨン(リウム美術館シニアキュレーター)イ・クァンフン(プロジェクトスペース・サルビア チーフキュレーター)など韓国人5名、また授賞委員会はキム・ヨンスン(ソウル芸術センター アートディレクター)ら3人の韓国人と、Franck Gautherot(フランク・ゴトロ、ディジョン・コンソーシアムディレクター)、クォク・キァン・チョー(シンガポール美術館ディレクター)の2人の外国人で組織された。

選ばれたのはク・ジョンア、キム・ソラ、ニッキー・S・リーと全て女性。

ク・ジョンアは1967年生まれで現在パリを拠点に活動を続けている。数々の国際展にも出展しており、日本での国際展でももちろん出展しており、最も日本で知られたのは2001年横浜トリエンナーレでではないだろうか。主にレディメイドで作品作りをする。
今回は角砂糖で作られた小さなオブジェ、というか壁のようなものがぼんやりと暗いスペースに置かれたインスタレーション。完璧な立方体を成す角砂糖が床に壁状に積み重ねられたというだけで、非常に危なげな、不安定ではかなげなイメージを持ってしまう。
また、ナポレオンが流刑になったエルバ島近くの光きらめく夜の海を写したビデオインスタレーション『Ssisai』、丸のパターンで女性が描かれたドローイング『Sechimi』もあわせて出品されている。「Ssisai」は粗忽でいつも不適な笑みをたたえている人間を指し、「Sechimi」はシラを切ることを指す韓国の統営(トンヨン)地方のなまり言葉である。

キム・ソラはもう日本でも名前がおなじみになった作家かもしれない。2002年の光州ビエンナーレ、2003年のヴェニスビエンナーレ、そして2005年の横浜トリエンナーレとソウルを拠点に国内外で活躍している。また、ギム・ホンソックとのコラボレーションでも知られている。
彼女はパフォーマンスを通して、またそのパフォーマンスの記録映像という形をとって表現する事が多いが、今回の『信託の夜』は観客参加型インスタレーションである。
入口を入るとひたすら男性が氷をボール型に削っている。もう一人の男性が「こんにちは」と看板を向けてくる。あとはその男性の出す看板にしたがって観客は進む事になる。ボール状の氷がストックされている冷凍庫からボールを選んで、ボーリング場のようになったレーンの上に投げる。すると、落ちた先によって数字が示される。「あなたは○番の道を選ばれました」と看板を掲げられ、ヘッドフォンを付けられるよう指示される。矢印を示される先には、大きな2枚の板が人が1人やっと通れる位の狭さで屹立している。その間に入ると、ヘッドフォンから大音量で音楽が流れてくる。この音楽はどうやら数字によって違うらしい。何とか長いその板の間を通り抜けると、看板マンが「さようなら」という看板を掲げて待っている。
ぼんやりしている間に人生ゲームに巻き込まれてしまったようなカラクリ。

ニッキー・S・リーは1970年生まれでニューヨークを拠点に活動している。名前を見るとコリアンアメリカン2世のように見えるが、彼女が生まれたのは韓国でである。
彼女の作品は、彼女自身が必ず登場する写真群である。「女子高生プロジェクト」「スケートボーダー・プロジェクト」「オハイオ・プロジェクト」「レズビアン・プロジェクト」「ヤッピー・プロジェクト」「エロダンサー・プロジェクト」…などあるコミュニティに侵入した自分を取るプロジェクトは、パフォーマンスを含む作品群という意味で、日本でも割とよく見ることが出来るものかもしれない。
それより心惹かれるのは「Parts」シリーズである。作家自身が写っているのだが、彼女の肩におかれた太い腕、彼女の髪の毛をいじる手、鏡を一心に見る彼女を撮る撮り手…と、もう1人の存在を匂わせるが、決してその全貌をみせることはなく、最小限にカットされている。まさしく写真をカットしているものもある。写真に残るおそらくは彼女が愛した人の余韻が香のように香る写真群である。




建物外にある、3人を紹介するボード。


このように開かれたエルメス・コリア美術賞だが、果たしてこれからはどうなっていくのか。2000年に海外企業が主催する初の美術賞として制定され、2003年からはアートソンジェセンターと共催となっているのである(ちなみに2000年の受賞者はチャン・ヨンヘ、2001年はキム・ボム、2002年パク・イソ、2003年スー・ドーホー、2004年パク・チャンギョン)。おそらくエルメスはソウルにビルを建設中ということもあり、これからもこの美術賞は続いていく事になるのであろう。問題は、アートソンジェが一体どうなるかであり、これは韓国美術界でも懸念の一つといえるだろう。

Posted by art,seoul at January 13, 2006 05:29 PM